監訳者のみなさんをはじめこの分野で著名な方々が書評を書いているので今更感がただよいつつも,「よろちくお願いちまちゅ」と書いた手前もあり,献本いただいたので書評をば。
「入門ソーシャルデータ」は今流行のソーシャルデータマイニングの入門書。FacebookやTwitterなどソーシャルネットワークが生み出すデータを分析したり,結果をビジュアライズするための手法を解説した書籍。読み始まって20ページ(!)でTwitterのデータを解析,GraphvisやProtovisでグラフ化してみせてしまうノリの良さ。その後はぐいぐい引きつけられながら,XFN,REST,OAuth,CouchDB,map reduceといった,ソーシャルデータと戯れるために必要な技術やツール,キーワードを学んで行ける。コードはPythonで書かれているので,Pythonに慣れ親しんだ人はもちろん,他の言語を使っている人でも,すんなりと読めるはずだ。
本書がすばらしいと思ったのは,単なる入門書ではなく,沢山の知見やインスピレーションを与えてくれることだと思う。序章にはWebの生みの親,ティム・バーナーズ・リーの言葉が以下のように引用されている。
ウェブは,技術的な創造というよりもソーシャルな(社会的,社交的)創造である。私は,ソーシャルな効果のために,つまり人々の交流を助けるためにウェブを設計した。専門家のおもちゃを作ったわけではない。ウェブの究極的な目標は,私たちのウェブ的なあり方を支援し,向上させることだ。ウェブは,家族,団体,企業に入り込む。遠く離れた人々の間に信頼を,すぐ前にいる人々の間に不信を生み出す。
Yahooは検索という手法でウェブの繋がりを強め,Googeはページランクで繋がりの持つ意味を深め,Facebookは人と人とのつながりをWebに持ち込んで大きくなった。Webの巨人が成し遂げた発展は「ソーシャルなつながり」に関連した技術革新が中心になっていることは明確だ。「次のWeb」を夢想し,あわよくば作り出すためのヒントを,本書はきっと与えてくれると思う。