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使い物になる英語を学び取る王道 シャドーイングと音読の科学

使い物になる英語を学び取る王道 シャドーイングと音読の科学

英語を学習する目的や目標はひとによって様々だと思いますが,「使い物になる英語」を習得するというのは多くの人が目標としているところでしょう。
「使い物になる英語」とはどんな英語でしょうか。たとえば,ネイティブスピーカーの話す英語を「スラスラ」聞き取れたり,英字新聞の記事を「スラスラ」読めるレベルでないと,ビジネスシーンや日常生活で「使い物になる」英語を習得しているとは言えません。こうして見ると,この「スラスラ」の度合いが「英語のスキルが使い物になるかどうか」を判断する上で重要な判断基準となることが分かります。じっさい,TOEICのようなテストでは,限られた時間でリスニング,リーディング能力を試されます。まさにどのくらい「スラスラ」英語を使いこなせるかを試されているわけです。
耳から入ってきた英語を,スラスラ理解する。または書かれた英語をスラスラ読解する。思ったこと,伝えたいことをスラスラ英語で言う。この「スラスラ」のことを,言語学の用語で「自動化」と呼んでいます。「自動化」を簡単に言うと,脳力をたくさん使うことなく,自然に言葉を操る状態のことです。私たちが母国語をスラスラ使いこなせるのは,「自動化」した状態で使っているからに他なりません。
私たちにとっての英語のような「第二言語」を自動化するのは時間がかかります。特に仕事を持った後で自由になる時間がないときに,使い物になる英語を習得するのは大変骨の折れるものです。できるだけ時間をかけず,効率よく第二外国語(英語)の「自動化」ができるようになればそれに越したことはありません。効率的な英語学習の「王道」として注目されているのが,「シャドーイング」と「音読」です。
「シャドーイング」とは,耳で聞いた言葉を出来るだけ間隔を置かずに繰り返して言う行為を指します。「音読」とは,文字通り書かれた言葉を声に出して読む行為を指します。「シャドーイングと音読の科学」では,シャドーイングと音読がいかに英語学習に効果的であるかを科学的なデータや実験結果を積み重ねながら,解説しています。シャドーイングの効果について解説している65ページから本文を引用します。

一般にシャドーイング学習の当初は,シャドーイングがまったく自動化していない,むしろかなり認知負荷が掛かった状態であることが予想できます。すなわち,認知負荷が高い状態で,大脳の様々な箇所が活性化している状態です。これは,言い換えると,意識的な学習への意欲(readiness:準備状態)が高い状態でもあります。ただし,他の課題を同時進行で処理するような余裕はない状態です。
この状態を抜け出すのは,ある程度の時間がかかります。そこでは,新たな習慣を形成するような繰り返し学習が重要です。同じ言語材料のシャドーイングを繰り返すことで,また異なる言語材料のシャドーイングをさらに繰り返すことで,処理段階のバイパス,情報の活性化,配置換え作業などの結果,だんだんとシャドーイングがつらい作業ではなくなってきます。少しずつ,英語音声の近くやその復唱に全神経を集中しなくても,シャドーイングが比較的楽にできるようになってきます。
そうすると,それまでまったく理解不能であった文の意味や,文法構造なども把握しながら,シャドーイングすることが可能になってきます。それまで,音声表象・音韻表象を形成することをひたすら繰り返していたのに,それと同時に文の処理をすること(=理解)モ可能になってきます。


社会人である私たちには,英語学習に費やす「時間」はあまり無いかも知れませんが「知恵」はあります。効率よい学習方法についてよく知り,知恵を使って日々の学習にフィードバックすることで,より早く,効率的に英語を学習することができるようになるはずです。「シャドーイングと音読の科学」には,効率よい英語学習に欠かせないヒントが,科学的な実証を伴って豊富に紹介されています。文章も比較的平易で読みやすく書かれています。英語学習のモチベーション維持のために読んでみたのですが,とても参考になる書籍でした。

2010-08-27 04:48