今回のPyConは,カンファレンス本体の他に,前日にチュートリアル,終了後に数日Sprintが開催されます。Sprintというのはいわゆる「短期集中型の開発イベント」のようなもの。普段ネットワーク上でコミュニケーションしながら開発を行っている連中が実際に集まって話し合いながら開発を行います。(なぜか)Djangoだけは別の場所でやってました。
Sprintは,テーマごとにいくつかのチームに分かれて行われていました。今回はTurboGearsのSprintに潜入してみました:-)。
TurboGearsのSprintは,以下のようなゴールが設定されていました。
- Docudo
- TurboGears上でドキュメンテーションを記述,蓄積,するための仕組み。tracのWikiみたいなもの。
- Kidのパフォーマンス改良
- Kidテンプレートのサーチパスロジック改良
- TurboGearsで複数のアプリを稼働できるような改良
で。
TurboGearsの「コア開発者」と呼べる人間は三人います。いろいろ話を聞くと,それぞれ独自のパーソナリティを持っているようでした。
- Kevin
- いいだしっぺ。明るいラテン系のお兄ちゃん,冗談を言ってはカラカラ笑う。楽観主義者。設計のセンスは抜群で,周囲の実装上の質問に即座に答えてました。あと物知り。よく勉強している。
- Mark
- Kevinのお友達。マネージャー的気質の開発者。実装面だけでなく,TurgoGearsの開発者コミュニティの行く末についても明確なビジョンを持っているようで,「すべき/すべきでないこと」について良く知っている。
- Ian
- SQLObject,FormEncodeなどの開発者。良い意味で超悲観主義的開発者。常に最悪のケースを考えながら開発をするタイプ。ご意見番。
それぞれ異なったパーソナリティを持った三人ですが,面白いのはそれぞれ「現実主義」を信念に共感しているらしい,のです。フレームワークの開発に「熱狂(ええと,あの,RoRのような...)」は不要。いいものを作りつづけることが必要条件で,利用者はあとからついてくる,くらいに思っているような節が感じられました。KevinとIanは性格的に正反対と言っていいほど異なっているのに,根深いところで思想を共有しているからこそ,IanはTurboGearsの開発に協力していられるんだと思います。
オープンソースのフレームワークでよくよく見分けなければならないと思うのは,開発陣や開発コミュニティが「現実的な落としどころを見極めながら開発を進められるかどうか」というところだと思います。表面的にはいけているような機能があっても,負荷をかけると落ちまくるとか,穴だらけだったりしたら仕事のツールとしては使えない。TurboGearsの連中はちゃんと「現実的な落としどころ」をふまえていて,着実に動くものを開発してゆけるポテンシャルを持っているようです。「こいつらの作っているものなら信用できる」というのが率直な感想。この三人なら,適度に多様性を保ちながら,仕事でも使えるクオリティを持ったフレームワークを作り続けてくれるはず。