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Python Conference 2008 Day2

Python Conference 2008 Day2

時差の関係で4時頃に目が覚めました。昨日分のエントリを書いたりして,録画したGvRのキーノートのビデオをニコ動にアップロードしようとして失敗したりしていたら,あっという間に8時くらいになってしまいました。エアロバイクをこいでからセッションに出かけようとしていたのですが,時間がなくてムリでした。

セッションの合間に,会場をうろうろしていたりしたせいもあって,いろんな人お話をした。台湾から来たPythonistaで,COREBlogを使ってくれている人と話したり,となりに座った人から「Airってパフォーマンス悪くない?」「僕は大柄じゃないので,軽くて薄いMacがいいんですよ」なんて会話してみたり。コミュニケーション能力は重要だし,英語のコミュニケーションスキルも重要ですよ>技術者のみなさん。使い捨てにされたりしないためにも,自己投資はしっかりしましょうね。

さて,二日目のトークについて,簡単にリポートをお送りします。


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Twisted Announcement

Pythonのネットワークサービス構築フレームワークTwisted開発チームのトーク。Twistedの開発を促進,バックアップするために,Twisted Foundationを立ち上げ,スポンサー企業からの献金を募集する,というアナウンスがありました。Twistedはルーカスフィルムなど多くの企業で活用されているようで,そのような企業が出資をするようです。

昨日のDjangoセッションではJacobが独立,Django Foundationを設立するというアナウンスがあったし,Pythonの周辺では,コアだけでなく,Python製のフレームワークにもお金を出して開発をより安定させようとする動きが目立つように思います。Pythonを取り巻く世界の広さや層の厚さをよく表している。


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Diamond Keynote: You *can* Fool All of the People All of the Time

もう一つのダイアモンドスポンサーGoogleのBrian Fitzpatrickさんのトーク。BrianさんはシカゴのGoogleブランチで働いているようです。ちなみに,今回はプラチナ,ゴールドというスポンサー枠の上にダイアモンドという枠が新設されています。

トークは,Googleの企業理念,Googleがカスタマーサービスと技術をどのように関連づけて考えているか,といった内容。「マーケティングチームは嘘を言うためにいるんじゃなくて,お客と技術者に真実(Truth)を言うためにいるんだ」「ユーザが増え,サービスの機能が増えると,開発者にとっても顧客にとっても満足度が下がる。だからサービスをできるだけシンプルに保つことが重要」「GoogleとPythonの哲学は似ている」。小気味よい言葉が次々に飛び出してきて。スーツ的な立場にいるはずの人でありながら,PyConにくるような技術者の琴線に触れるような言葉を次々に繰り出すのがすごいと思いました。やっぱりGoogleで働いている人はひと味違うなあ。


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Keynote: Intellectual Property and Open Source

IP(Intellectual property, 知的所有)法律家のVan Lindbergさんのトーク。知的所有権,著作権や法律をからめながら,オープンソースやオープンソースライセンスについてのトークをしてくれました。

知的所有権の概念,歴史などから始まり,時には知的所有権にかんして争われた実際の訴訟を例に取りながら,トークはオープンソース自体の話題に及びます。社会的に見ると,オープンソースはWinWinの関係を生みやすい仕組みであること,ただしフリーライダー問題についてはよく注意する必要がある,などとお話ししていました。オープンソースライセンスについては,BSDやPSFライセンスの方が,GPLより「より利用者を獲得しやすく,広がってゆきやすい」という点で優れていると考えているようでした。

技術的な内容ではなく,かつ難しかったのですが,こういうトークが聞けるのもPyConのおもしろさといえるかも。Van Lindbergさんはもとバリバリの技術者で,ソフトだけでなくハードの回路設計に関わっていたこともあるそう。法律の世界では,オープンソースライセンスモデルの法的妥当性についての専門家として認知されています。


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SQLAlchemy 0.4 and Beyond

PythonのData mapper型O/Rマッパー SQLAlchemyの作者Mike Bayerさんによるトーク。まずはSQLAlchemyの歴史を簡単に振り返りながら,これまでの開発の道のりをたどります。
0.1はまったく実験的なプロジェクトで,0.2からユーザが集まってきて,0.4がリリースされてから開発者がどっと集まって,周辺の開発が盛んになってきた,と簡単にこれまでの経緯を振り返っていました。かくいう私も,0.3まではSpecを見ただけで使おうと思わなかったけど,0.4になってから本気で使おうと思ったクチです。

0.4では本当にいろいろな機能が追加されています。テーブル継承についても機能が大幅に強化されているし,「c」が不要になったり,SQL表現が抽象化できるようになったり,いわゆるwhere句に書くような条件指定用のSQLがPythonicに書けるようになっていたり,スピードが早くなっていたり。

細かい機能追加を見てゆくときりがないんだけど,他に特記すべき点としては

  • Migrationが正式に復活 - モデルの変更をDBに反映しやすくなった
  • Jythonを正式にサポート - JythonでSQLAlchemyを「正式に」使えるようになります
  • SQLAlchemyの本が2冊出る - ひとつはTurboGearsの本を書いているMarkさんが,もう一冊はMikeさん本人が書くようです。「本を書くって本当につらいよね」とボヤいていました:-)

昼ご飯 - PSF ミーティング

初日はバックに入った簡単な昼ご飯でしたが,二日目はちょっと豪華。テーブルに盛られた料理を取り分けられる形式。こういう形式ってなんて言うんだろ,バイキングではないし。。。

会場となるホテルの一階はトーク用に使われています。地下にはもう小さな部屋がいくつかあって,自由に予約して使えるようになっています。広めの部屋に入って昼食を食べました。

しばらくすると今回のチェアマンであるDavidさんをはじめ,見たことがあるPSFの面々が入ってきた。どうやら,PyConのPSFのランチミーティングをするための部屋だったらしく,興味があるなら残っていていいよ,ということだったので,ミーティングに参加させていただきました。

ミーティングの内容は,再来年(PyCon 2010)の会場をどうするか,ということ。来年(2009)はすでにシカゴに決まっています。もう2年後の話をしているのか,とちょっとびっくりしましたが,ワシントンDCでチェアマンをしていたSteve Holdenが「2年前の今頃は,すでに今年のPyConをシカゴでやることが決まっていたし,遅いくらいだ」とコメントしていました。PSFのマネジメント能力の鉄壁ぶりをかいま見た気がしました。

アメリカはとても広い国で,多くの参加者は飛行機を使って来場する。開催場所は重要。またPSFのBoardメンバー自身ではイベントを運営できないので,地域のユーザグループの協力が絶対的に必要。1000人規模の参加者を収容できる会場は限られているし,ボランタリーな組織である以上コストについてもよく考えなければならない。

ミーティングにおじゃまさせていただいて,PyConというイベントは,Pythonistaの熱狂と,PSFメンバーの手堅い運営能力によって支えられている,ということがよく分かりました。


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Using Grok to Walk Like a Duck

Zope3ベースの軽量Web開発フレームワークGrokの作者Brandon C Rhodesさんのトーク。Grokについてのトークかとおもいきや,ぜんぜん違った。オブジェクト指向の設計のお話が中心でした。Pythonのオブジェクト指向を使って,既存のクラスの機能を拡張するための手法を,ダックタイピング,クラス継承,モンキーパッチなどを例にとって利点や欠点について議論したあと,Java風インターフェースのPython実装zope3.interfaceの話に落ち着く,というような内容。zope3.interfaceやzope3.adapterはZope3とは切り離して使えるし,reusableで独立性の高いモジュールを作るにはとても便利なものだとは知っていたけど,あらためて使ってみようかと思いました。また,こういう人が作っているGrokというフレームワークにも改めて興味がわきましたよ。


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py.test: towards interactive, distributed and rapid testing

テスティングフレームワークpy.testのトーク。py.testの,そしてPyPyの開発者でもあるMaciej Fijalkowskiさんと,Brian Dorseyさんのトーク。

py.testを一言で表現するととNoseライクなテスティングフレームワーク。もともとPyPyのために作ったテスティングフレームワークなのだそうです。noseとの違いは,機能がカスタマイズできる,ということ。ちょっと使ってみよう。

本当はライトニングトークも聞きたかったのだけど,夕方には部屋に戻って仕事をしていました。明日の最終日は夕方前にはセッションが終わってしまうようなので,ホテルの隣でやっているCATSの午後イチの講演を見て,そのあとまたモールにでも行こうと思っています。

2010-08-27 04:47