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Pythonで嫁を見つけた話 - みんなのPython第四版に寄せて

Pythonで嫁を見つけた話 - みんなのPython第四版に寄せて

まもなく発刊される拙著みんなのPython 第四版の改訂向け執筆を終えた。

初版の発売は2006年で,今年はちょうど10年目になる。そこでふと,もしPythonを使っていなかったらどうなったろう,と考えてみた。そして重大なことに気づいた。

みんなのPythonを書く少し前,2005年ごろの僕は,今以上に後先考えないで行動するオッサンだった。当時まだ日本では無名に近かったPythonのより新し情報を仕入れ,本場のオープンソース関連カンファレンスに行って技術の成長点の雰囲気を味わうべく,ワシントンDCで開催されたPyCon USに行ってみよう,と突然思ったのだった。今以上に英語ができなかった僕は,頭がキレッキレの第一線級エンジニアが繰り出す早口の英語トークも聞き取れるはずもなく,おまけに機内で米国人のパーサーにコーヒーを頼んだらコーラが出てくるような始末であった。

そんなことがあり,海外からの情報を咀嚼して活かし,この先生き残るには英語を勉強するしかない,と決心したのだった。そして通い始めた英語学校で嫁と出会い,結婚に至ったのだった。

そうだ。Pythonを使っていなかった時間線の僕は,嫁と出会っていなかったはずなのだ。嫁と出会っていなかったとしたら僕は,今のようには暮らしていなかったと思う。

仕事の面を振り返ると,Pythonを使っていたおかげでいただけた案件がとても多い。Pythonを使っていなかったら,今のように悠々と仕事をしていられなかったと思う。PythonはWebやクラウドなど先端的な技術分野で牽引役と言ってもいい立場にずっと立ち続けてきた。近年,機械学習・AIやデータサイエンスの分野において,Pythonが重要な役割を果たしているのがその証左と言える。

つまり,Python周辺の成長点を追い続けることで,これから来る技術にいち早く触れることができるわけだ。そのおかけで,個人事業主に毛が生えた程度の僕には不釣り合いなほど大きな案件にも多く関わって来れた。今は自社サービスだけで細々と食べて行けるようになったので受託の開発は受けなくなってしまったけど,先端分野を追ってサービスに活かしていることには変わりがない。

昔話はこのくらいにして,未来の話をしてみよう。10年先のことを言い当てるのは難しいけど,一つ確実に分かっていることは,日本の人口が1,000万人ほど減っている,ということだ。人口構成も大きく変化し,労働力人口は今以上に減っている。過疎化が進み,地方を中心に地域を維持できない自治体が増えてゆく。

AI,人工知能技術は,今望まれているほど発達していないと思う。今のブームはどう見ても過剰すぎるので,その反動で急激に注目を集めなくなってゆくとすら思っている。しかし,機械学習の分野は,増え続けるデータを,確率や統計の手法を使ってよりインテリジェントに処理するための手法として,今以上に一般化するはずだ。

10年後の日本では,ドローンやIoTデバイス,自動運転自動車やロボットなどの技術が,マンパワーの不足をうまく補っているだろうか。過疎化と同時に進む過密化の解消を,うまく次世代のイノベーションにつなげて行けるだろうか。

10年間,僕がなんとかやってこれたのは,紛れもなくPythonのおかげだ。愛する家族も得て,今こうして幸せに暮らしているのもPythonのおかげだ。

今から10年後,僕は何をしているだろう。そしてみなさんは,10年後何をしているだろう。そんな気持ちを添えて,10周年を迎えたみんなのPython 第四版をお届けする。

2016-11-25 12:00